| 教育コラム 2007. 08. Part II |
| |
| トランザクション――叡知は未来に |
| |
| |
思考力の育成につながる「滞在型アクティブ・ラーニング」という学習形態があります。夏の場合、「サマースクール」「サマーキャンプ」などで、行われます。 |
| |
| |
テーマに即した場所に行って、具体的な体験を重ねながら、テーマについてグループでディスカッションをします。たとえば、高原に行って、自然と人間の共生、生命と世界の関係などを考えたりします。 |
| |
| |
グループ・ディスカッションは、なかなかいい成果をあげます。誰かに自分の考えを真剣に話しているうちに、自分の考えがまとまったり、自分の誤りに気づいたりします。
真剣に話すという営みは、高度に知的な活動です。それは、相手と話すだけでなく、自分とも話すことです。相手の立場に立とうとしたり、ちょっと前の自分の考えをふりかえったり、と心も頭もフル回転です。 |
| |
|
|
|
アメリカの著名な教育学者ジョン・デューイは、こうした自己省察をふくんだ、自分と他者との相互活動を「トランザクション」(transaction)と呼んで、とても大切にしていました。 |
| |
|
|
|
しかし、ディスカッションのなかで、知ったかぶりをしたり、自分の誤りを隠そうとしたり、相手を無闇に否定しようとしたりと、自己防衛、自己顕示に走ってしまうと、トランザクションになりません。勝敗、見栄、体裁を気にしていると、自分を高めることはできません。
勝敗、見栄、体裁を気にすることは、今の自分にこだわることです。 |
| |
|
| |
叡知は、今の自分のなかにではなく、未来の自分のなかにあります。今の自分に、ましてや過去の自分にこだわっているかぎり、叡知は遠のくばかりです。
叡知をめざす人は、人を惹きつけます。コロンビア大学で講義をしていたデューイは「柔和な知性の光に満ち、‥‥ほとんど聖フランシスコのように輝いていた」そうです。
彼は、生涯にわたり、トランザクションを続け、叡知を求めた人でした。 |
| |
(校長 田中智志) |
|
|