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教育コラム 2009.4
 
  非言語的コミュニケーション
 
   グレゴリー・ベイトソン(Gregory Bateson)というアメリカの人類学者・言語学者が、次のように述べています。

「少年が、少女に『好きだ』というとき、彼は、うわずった声、ぎこちない仕草などが伝えるメッセージを、むりやり言葉にしている。少女も、まともな感覚をもっているなら、言葉よりも、それに付随する象徴的な意味を感じとるだろう」と(『精神の生態学』)。

   
   顔の表情、声の抑揚、身の所作などは、「キネシクス」(kinesics)と呼ばれています。たとえば、詐欺師や演技者は、こうしたキネシクスを、自由自在に操れる人です。

 キネシクスは、人間だけでなく動物にも見られます。イヌも悲しそうな顔をしますし、ネコも怒った声を出します。しかし、人間の表情、声色にくらべるなら、精密さを欠いています。

 おそらく、この数千年の間、言語を用いたコミュニケーションが進化するとともに、人間のキネシクスを用いるコミュニケーションの方法も進化したのでしょう。
 

   
   こうしたキネシクスによるコミュニケーション、すなわち「非言語的コミュニケーション」は、言語的コミュニケーションにくらべて、情報よりも心情を伝えています。
 いいかえるなら、そこで伝えられるものは、対面している相手と自分との関係であり、対峙している世界と自分との関係です。
 したがって、こうしたコミュニケーションが嘘のコミュニケーションになってしまうと、人間の関係はたちまち病的なものになり、当人も神経症に陥ってしまいます。
 真実は、厳密にいえば、人間にはとらえきれないものですが、真実への意志(真実を言おうとする態度)は、人間の存在を支えているものです。
   
   そして、この真実への意志は、キネシクスの本質です。その表情、所作は、本来、無意識のうちに現れるもの、意識・意図から自由なものだからです。。
 冒頭にあげた「好きだ」という告白を支えているのも、キネシクスが体現する「本当の気持ちです」という非言語的なメッセージです。
   
(校長 田中智志)
 
 
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