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教育コラム 2012. 01
 
  全体と要素
 
   「単純なものから複雑なものへ」という考え方、「特殊なものから一般的なものへ」という考え方は、教育の基本であると考えられています。
 なるほど、小学生にいきなり二次関数を教えようとしても、無理です。中学生にいきなりハイデガーの哲学を教えようとしても、やはり無理です。
 「単純なものから複雑なものへ」、「特殊なものから一般的なものへ」、という考え方は、そうした意味では正しい考え方です。
   
   しかし、「要素から全体へ」という考え方は、教育の基本とはいえないのです。たとえば、言葉を学ぶときに、まず単語を学ばせ、次に規則としての文法を学ばせ、最後に文章を読ませたり書かせたりすることは、かならずしも正しい方法であるとはいえないのです。
   
     というのも、私たちが「単語」と思っているものは、「文章」という「全体」を構成する「要素」でありながら、じつはつねに「文章」をともなっているからです。いいかえれば、「単語」は「要素」でありながら同時に「全体」をともなってい るからです。

 もっとも簡単な例を挙げましょう。
 幼い子どもがお父さんに向かって、「パパ!」と言います。
 「パパ」はたしかに単語です。しかし、その子どもは、単語の「パパ」を口にしたのではないのです。それは「パパ、おかえりなさい!」という文章だったり、「パパ、これ買って!」という文章だったりするからです。

   
   人はどんなときでも、ただの単語を口にしたりしません。ただの単語にしか聞こえないもの、読めないものでも、それはかならず文章をともなっています。そうだからこそ、たとえば、俳句や短歌が最小の文学として成り立っているのです。
 要素はつねに全体をともなっています。それは、国語だけでなく、算数、理科、社会、体育、音楽、図工についてもいえることです。先生たちがそれぞれの教科のなかにある「全体内要素」を見つけていくと、きっと子どもたちの理解や記憶がぐんと深まるはずです。
 
(教育顧問 田中智志)
 
 
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