教育コラム 2014.7

分かち合うこと

 松茸の自生している場所は、一般に秘密にされています。もしも、あなたが、山歩きをしていて、松茸の自生している場所を偶然見つけたなら、どうするでしょうか。きっと仲のいい友人には教えても、「ネットで公開しよう」などとは思わないでしょう。

 なぜあなたは、松茸の自生地を秘密にしようとするのでしょうか。それは、松茸の自生地が、本来、自分の所有物ではな く、みんなで分かち合うべき場所だと、知っているからであり、加えて、みんなで分かち合うことをしないで、松茸を独占しようとする人がいる、と知っているからです。

 あなたが見つけたものが、松茸の自生地ではなく、すごく効果的な受験勉強の方法だったら、どうでしょうか。「ネットで公開してもいいけど、課金制にしよう」と思うかもしれません。「いやいや、本にして、ひと儲けよう!」と思うかもしれません。

 人が、受験勉強の仕方でお金儲けを考えるのは、やはりそれが、本来、自分の所有物ではなく、みんなで分かち合うべきものだと知っているからであり、加えて、みんなで分かち合うことをしないで、自分だけ得をしようとする人がいる、と知っているからです。

 あなたの見つけたものが、生きることの真実だったら、どうでしょうか。そして、人が人として生きることの真実が、まさに自分が生きている場所で、その場所に深くかかわりながら、他者と共に大切なものを分かち合うことであると知ったとき、あなたはどうするでしょうか。分かち合うという人生の真実 に反してでも、仲間内だけの秘密にするでしょうか。それとも、本にして印税を稼ごうとするでしょうか。

 科学の世界だけでなく、哲学の世界でも、「真理(真実)」と呼ばれてきたものはいろいろありますが、本当に「真理」と呼べるものは、それ自体が分かち合われることを内実としているものではないでしょうか。ずっと「秘密」にできたり、「お金儲け」のタネにできたりするもの は、「真理」の名に値しないと思います。

教育顧問 田中智志
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