教育コラム 2017.11

コミュニケーションって何?

 近年、「コミュニケーション能力」(「コミュ力」)の大切さが説かれますが、コミュニケーション」とは、そもそもどういう営みなのでしょうか。
 「コミュ力」の「コミュニケーション」など、なにやらもっともらしく議論されていますが、ようするに、失敗や損をしないように、他人とうまくやっていく言語能力のように見えます。

 一般に「コミュニケーション」といえば、人と人の情報のやりとりと考えられています。そして、情報の送り手には意図があり、情報の受け手には理解が生じる、とされています。
 たとえば、あなたに道を教えたいという意図が私にあり、何らかのかたちで、あなたに行先がわかるという理解が生じるとき、コミュニケーションが行われた、と。
 その意味では、人以外の動物も、コミュニケーションしているといえます。仲間に危険を知らせ、仲間がそれを理解するという行動は、群れで行動する動物にふつうに見られます。

 しかし、「コミュニケーション」という言葉は、もともと「共有・参加・分担」を意味するラテン語のコミュニオ(communio)に由来しています。つまり、もともとのコミュニケーションは、たんなる情報のやりとりというよりも、「ともに分けあう」ことを意味していた、と考えられます。
 この本来のコミュニケーションが前提としていることは、私たちには「ともに分けあう」べき何か大切なものがあるということです。たとえば、新しいいのちの誕生の歓びも、大切な人を喪い遺された人の悲しみも、「ともに分けあう」べきものです。
 これに加えてもう一つ、容易に推測できることは、この「ともに分けあう」ことが、他者への気遣いをふくんでいることです。
 もしもコミュニケーションが本来、何か大切なものを前提にした、他者への気遣いであったとすれば、コミュニケーションの原型は、人と人のかかわりだけでなく、祈りのような、人と神のかかわりをふくんでいたとも考えられるでしょう。
 ともあれ、「コミュ力」の形成を云々する前に、もう一度、コミュニケーションとは何か、と問いなおしてみてはどうでしょうか。

教育顧問 田中智志
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