一昔前とちがい、現在の大学4年生にとって、この夏休みは、開放感あふれる夏休みでしょう。私が学生のころは、4年生の夏休みは、就職活動開始前の準備期間で、とても休んではいられませんでした。今の4年生の夏休みは、就職活動後のバカンス(?)の時間でしょう。
ところが、夏休みに入っても、まだ就職先が決まっていない学生もいます。彼(女)らは、かなり(とても?)焦っています。大事なことは、やはり自分の人生のヴィジョンのようです。自分はどんな仕事をしたいのか、具体的に想い描くことです。
ただ、自分の人生のヴィジョンを想い描こうとするとき、「自分はどんなタイプの人間か」ときまじめに問わないほうがいいでしょう。よく「ちゃんと自己分析をしなさい」と教えられますが、無茶な話です。自分がどんな人間なのか、人生に何を望んでいるのか、ふつう、人ははっきりと知りませんし、そもそも明確に知る必要もありません。
もう13年前になりますが、哲学者の鷲田清一さんは、2005年の『〈想像〉のレッスン』という本のなかで、「じぶんについて不明な者どうしが絡みあい、支えあって生きているのが、わたしたちの共同生活である」と述べています。
たしかに、あぶない会社もありますから、事前のリサーチは大事ですし、いくらなんでも無理、ということもありますが、「自己」にはこだわらないほうがいいでしょう。なんとなく好き、いつのまにか引き寄せられる、そんな漠然とした、しかしなんだか逆らえない力に引き寄せられて、人は人と集いますから。