教育コラム 2018.11.

「地上で最期の言葉」

 2018年12月5日に、アメリカの元大統領ジョージ・W・ブッシュ氏は、父親で、やはりアメリカの大統領だったジョージ・H・W・ブッシュの葬儀を執り行い、そのなかでスピーチを行いました。
 現大統領とともに、多くの大統領経験者が集まるなかで、ブッシュ氏は、心なごむジョークをところどころに織り込みながら、父親についての思い出を語っていました。
 いくつか、私の心に残っている言葉を紹介したいと思います。

ブッシュ氏はそこで「父は、笑いが大好きでした」と述べています。「とくに自分自身を笑うことが」と。人をからかったり、毒舌だったりしたけれども、そこに悪意のかけらもなかった、と。「父は、人を楽しませるジョークをとても大切にしていました」。
 ブッシュ氏はまた、父が「自分よりも他者を大切するすごい力をもっていました」と述べています。多くの人が、父が「自分のメンター」であり、父を「心から尊敬していた」と言ってくれたと。「彼はじっと[私の言葉に]耳を傾け、相談に乗ってくれた。彼は真の友だった」。
ブッシュ氏はまた、自分たちが「父の忍耐力を試してばかりいました」が、「父は、いつも無条件の愛(unconditional love)という大きな贈りもので、自分たちに応えてくれました」と述べています。「私たちにとって、父は、ほとんど完全な人でした」。
 「ただし、完全に完全ではなかった」とも言っています。父は、たとえば、ダンスがとても下手だったし、野菜が嫌いでした。とくにブロッコリーが大嫌いでした。そして「その野菜嫌いの遺伝子を、私たちに残していったのです」と。

先週の金曜日、もうほとんど喋れなくなっていた父に、ジョージ氏が「父さん、愛しています。父さんは最高だったよ」と伝えると、父のジョージは「私も愛している」“I love you, too.”と応えたそうです。それが、彼が「地上で残した最期の言葉」(the last words he would ever say on earth)だっただろう、と。
 こうして、伝聞形態で言葉にすると、なんだかスピーチを聞いたときの感動が、どこかに消えていってしまうようですが。

教育顧問 田中智志
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