教育コラム 2019. 07.

空気の1000倍

    人は、世界のなかで生きています。この世界は、社会でもあれば、自然でもあります。人は、社会のなかで、おもに自分や家族の幸福な利益を求めて、生きています。こんな勉強がしたい、こんな仕事がしたい、と。では、人は、自然のなかで何を求めて生きているのでしょうか。

    自然のなかで生きることは、基本的に自然とともに生きることです。それは、自然の法則によりそいながら、自然に生かされることでもあります。熱とか、温度とか、小学校の理科の時間に学ぶことのすべては、自然の法則に貫かれています。

    ずいぶん前から、「地球の温暖化」が問題になっています。地球が、少しずつ熱くなっていることです。これまでに起こらなかった異常な現象が、起きています。南の海にしかいなかった魚が、東京湾で見つかったり、沖縄の珊瑚が、どんどん死んでいったり、長年、人びとが住んできた場所で、土砂崩れが起こったり、台風が迷走したり、などなど。

    こうした地球の温暖化は、海水温の上昇と密接に関係しています。海水温の上昇は、気温の上昇と連動していますが、海水は、空気にくらべて、圧倒的に多くの熱をたくわえています。たとえば、夏の暑さは、たしかに空気の暑さによるものですが、もとをたどれば、それは、海水の熱さによるものです。

    この40年くらいのあいだに、地球全体の大気の温度は、およそ0.3度高くなっています。たいしたことはないな、思います。これに対して、地球全体の海の温度は、0.037度高くなっているだけです。全然たいしたことないな、と思います。

    しかし、海全体がたくわえている熱は、大気全体がたくわえている熱のおよそ1000倍です。したがって、海水温が0.037度高くなったということは、空気なら、37度高くなったということです。つまり、もしも海がないと、地球は、この40年間に、37度も気温が上昇したことになります。とても生きていられません。

    私たちみんなが生きている自然が、今どうなっているのか、その事実をよく知ることも、自然とともに生きることです。そもそも地球の温暖化は、人が自然とともに生きてこなかったから、起きてしまった自然現象なのです。

教育顧問 田中智志
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