教育コラム 2019. 08.

サイコロをふらない神、ではなく

    19世紀の終わり頃、物理学の世界に、統計学が入ってきました。この統計学を用いた物理学は、「統計力学」と呼ばれています。この統計力学という考え方に対して、アインシュタインは、「神はサイコロをふらない」と言って、批判しました。確率で表される数値は、神が定めた法則ではない、神はこの世界の隅々まで支配しているのだから、と。
アインシュタインのいう神は、聖書のなかの、ヤハウェという神でしょう。

    聖書のなかには、二人(?)の神が登場します。ヤハウェとエロイムです。キリスト教は、「一神教」、唯一神の宗教、と言われてきましたが、なぜか、神はひとりではありません。日本では、ほとんど知られていませんが、この二人の神の性格は、対称的です。

    ヤハウェは、自分が創りだしたもの(「被造物」といいます)、たとえば、人間をこと細かく支配しようとします。あれをしろ、これをしろ、それはダメ、あれもダメ、と命令します。ヤウェは、神経質な管理者みたいな神です。しかも、途方もなく強大な力をもっていて、なんでも思いどおりにします。いわば、全知全能、〈強さ〉の神です。

    エロイムは、ヤハウェと違い、人間を無から創りだしたりしません。すでに在ったものに、いのちを与えます。いわば、無機物が有機物になり、有機物が生物に、動物に、そして人間になる道を教えます。そして、いのちに、人間に「善く在れ」と呼びかけるだけです。ずっと見守っているから、がんばって、というだけです。エロイムは、強大な支配力をもっていません。いわば、いつも傍にいる、〈弱さ〉の神です。

    この二人の神は、先生の二つのタイプに似ています。指導し管理するタイプと、呼びかけ見守るタイプです。もちろん、これら二つのタイプは、一人の先生のなかに両方あるものですが、だいたい、どちらかに傾いています。

    一見すると、後者、呼びかけ見守るタイプの先生は、優しいというよりも、情けなく見えるかもしれません。「先生、もっとしっかり指導してください」と言いたくなることもあるでしょう。しかし、気が弱くてそうしている場合もありますが、そうでない場合もあります。その〈弱さ〉が相手を最後まで信じるという、〈強さ〉に支えられている場合もあります。

教育顧問 田中智志
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