教育コラム 2019. 09.

自分に対し真実である

     アメリカに、エレン・デジェネレス(Ellen DeGeneres)という、ルイジアナ州出身のコメディアン・女優がいます。私と同じ1958年の生まれです。その彼女は、2009年にある高校の卒業式で行ったスピーチで、「成功」について、次のように語っています。
     「私は、若いころ、今考えている成功とは違う成功を考えていました。成功は、有名になること、著名人になること、高級車に乗ること、‥‥‥というように。でも、成功の意味が変わりました。成功は、しっかりと自分自身を生きることであり、他人の圧力に屈し、自分ではない何かになろうとすることではないのです。正直で交感的な人格(an honest and compassionate person)として自分の人生を生き、何らかの方法で他者に貢献することです」と。

     そして、彼女は、そのスピーチを次のように結んでいます。
「大切なことは、自分の心情(passion)に従い、自分に対し真実であり続けることです。けっしてだれかの命令に従うことではありません。あなたが森の中で迷子にでもなっていないかぎり、あなたには、自分の道が見えます。とにかくその道に従いなさい」と。
     「自分に対し真実である」(to be true to yourself)とは、自分の心の奥底から聞こえてくる呼び声に聴き従う、ということです。その呼び声は、これまで「良心の呼び声」「魂の呼び声」といった言葉で語られてきました。デジェネレスにとって、その声に聴き従うことが、自分自身を生きること、つまり本来的な「成功」です。

     人は、ときに「自分に対し虚偽である」生き方をしてしまいます。通俗的な「成功」に惑わされて、本来的な「成功」を見失ってしまいます。
     その本来的な「成功」を思い出すためには、自分が「これこそが重要だ」と思っていることを、いったん捨てることも必要です。通俗的な「成功」は、テレビやネットなどを通じて、毎日、「これこそが重要です」と伝え広められているからです。私たちも、たまには、そうした「通俗的」な回路を遮断し、静寂のなかで耳を澄ましてみるべきでしょう。
     私たちは、自分がだれなのか、知っていますが、自分がどこに向かうべきなのか、知らないままです。それは、日々、自分で自分に問いかけるべき問いです。

教育顧問 田中智志
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