山梨学院小学校 卒業式 学校長式辞(2017年3月20日)

「夢:のび太は素敵な少年」

 8期生のみなさん、卒業おめでとうございます。保護者の皆様、本日は、お子様のご卒業まことにおめでとうございます。

 いまから、旅立つ8期生のみなさんに、小学校の校長として最後の授業をしたいと思います。マンガ『ドラえもん』の「のび太」についてです。

 みなさんはどういった「のび太」のイメージをもっていますか? 勉強ではテストで0点続きで、クラスの最下位。スポーツも苦手で、ジャイアンやスネ夫からもからかわれる。パパやママ、担任の先生から怒られてばかり。「ダメダメ」の男の子というイメージかもしれません。でも、ドラえもんの作品をよく読んでみると、実は、のび太は、人生で大成功を収めているのではないかと思うことがあります。

 長編の大冒険シリーズでは、ときにドラえもんに代わって、リーダシップを発揮し、だれも解決できなかった問題を解決していきます。どんなにのろまでも、ジャイアンやスネ夫からはいつも声をかけられ、気に掛けられている。失敗続きでも、勉強が不得意でも、不登校になるわけでも、引きこもりになるわけでもなく、前向きに毎日を過ごしている。そして、なによりの大成功は、のび太は、念願のしずかちゃんとの結婚を果たすことです。

 みなさんには、だれだって「ダメのび太」のところがありませんか。三日坊主で、成績が振るわなくても大丈夫です。私たちが、気づかないのび太の素晴らしいところを学んで、のび太と同じように人生を成功させましょう。ここでは、是非、のび太の真似てほしいことを2つお話しします。

 一つ目は、「大きな目標を掲げて、それを口にする」ことです。
 あるとき、理科の授業で、のび太は先生に「雲の上の天国は、どのあたりに浮かんでいるんですか?」と質問します。すると、先生から「君は何年生になった? 水蒸気の上にそんなものあるわけないだろう」といわれ、ジャイアンやスネ夫からも「メルヘンの世界にいるんだね」とバカにされます。のび太は「天国がぜったいにないってどうしていいきれるんだよ! 世界中の雲の上を確かめてみたか? 天国があるって証明してみせる!」と宣言します。確かに、『ジャックと豆の木』などの昔のお話には、たくさん天国が描かれていますね。のび太にしては珍しく、図書館で調べたり、ドラえもんの力を借りて、すべての雲の上を調べてみますが、なにもないことが分かり、のび太はがっかりします。

 ここでのび太のした大切なことは、「天国はある、それを証明してやる」という大きな目標を掲げていることです。「しずかちゃんと結婚する」というのは、最大ののび太の目標でしたね。のび太は時々、絶滅した動物の楽園を作るとか、竹馬大会で優勝するとか、一見すると、実現不可能に思える大きな目標を掲げます。みなさんも、大きな目標や大きな夢があると思いますが、いうのが恥ずかしいとおもったことがありませんか? 大人たちから「なにをバカなことをいって」といわれるかもと心配になったりしていませんか? でも、人類の進歩も科学の進展も、すべては、「なにをバカなことをいって」から始まっているのです。まだ飛行機も宇宙ロケットもないときに、「空を飛びたい」「月に行きたい」と大きな夢や目標をしゃべった人たちは、周りから笑われました。でも、そうした大きな目標、夢を口にした人がいたからこそ、人類は進歩してきました。

 みなさんの成長も同じです。サッカーの日本代表になりたい、ノーベル賞をとる科学者になりたい、ドラマのキムタクのような外科医になりたい。目標は、人から笑われるくらいの大きなものでいい。のび太の素晴らしいところは、大きな夢も日常の小さな目標も、それをいつも口にだし、宣言していることです。目標は、もつだけではだめです。是非、周りの人に絶えず表明しましょう。そうすることで、自分の中に少しでも目標に近づきたいという気持ちを、持ち続けることができます。

 でも、夢や目標を掲げて、それを口にしたとしても、それだけで目標は実現しません。目標に近づくための努力が必要です。怠けぐせのあるのび太が、どのようにして努力していったか見てみましょう。

 これが、みなさんに伝えたいのび太の二つ目のすばらしいところです。
 二つ目は、「目標から今の自分をみつめる」ということです。のび太は、しばしば、タイムマシンやタイムテレビをつかって、未来の自分を見にいきました。こんなにだらしのない自分が本当にしずかちゃんと結婚できるのかと不安になったときには、妻になりさらに素敵になったしずかちゃんを見に行きます。それをみて、のび太は、今の僕じゃだめだ、もっといい人になろうと決心します。また、のび太の父親が、いつも酔っ払って帰ってくるのをみて、未来の自分はどうなのか、見に行きます。すると、未来の自分も、同じようにだらしない姿で、しずかちゃんにいつも助けられている。のび太はがっかりするのですが、未来ののび太はこう言います。「いつもやる気はなくしていない。人生はまだまだ長いんだ。ここからが勝負だよ」。それを聞いて、のび太は、「しっかり、やろうね、おたがいに」といって、未来の自分とがっちり握手をかわします。

 ここで重要なことは、のび太とおなじように、目標を達成した自分から逆算して、今、何をすべきかを考えるようにすることです。ドラえもんの秘密道具のいくつかは、実はみなさんそれぞれもっています。実際にタイムマシンがなくても、タイムテレビがなくても、目標を叶えた自分の未来を想像することはできます。くじけそうなとき、上手くいかないときにこそ、なりたい自分を思い描いてください。そうすれば、今、何をすればいいのかが分かってきます。のび太は、それを繰り返し、成長していっているのです。

 みなさんは、いきなり完璧な人間になれなくても、のび太にならなれます。のび太のように、「大きな目標を掲げて、それを口にする」。ひとに笑われたっていい。大きな夢も、小さな目標も、必ず口に出しましょう。そして、「目標から今の自分をみつめる」。心のタイムマシンやタイムテレビで、目標を叶えた自分を想像し、そのために今、何をやるべきかを考えましょう。明日から、実践してみてください。

 これで、校長先生からの最後の授業を終わります。

<参考文献>
横山泰行『「のび太」が教えてくれたこと』アスコム、2011年
横山泰行『「のび太」という生き方』アスコム、2014年

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